ハードコア・パッドスタイル番外編 練習時間について考える - 薙刀式をやって感じたこと|うりなみ
スーパー・ハードコア派のみなさん、こんばんは。以前にこういう記事を書きました。今回も練習論です。
メンバーシップ専用記事として書いたのですが時間がないと悩んでいる方も多いと思いますので公開することにしました。
ハードコア・パッドスタイルの番外編としてご覧いただけたらと思います…
薙刀式の練習をして気付いたことがあります。
新しいキー配列を覚えるという、まさに「アンラーニング」が必要な分野に挑戦してみたんですけれど、改めて感じたのは音楽の練習と全く同じだということでした。
面白いことに、薙刀式には「アルペジオ」という用語すらあるんですよ…
音楽でアルペジオといえば和音を一音ずつ弾いていく奏法ですが、薙刀式では動作の連結をアルペジオと呼びます。
いわんとすることはわかりますよね。
力まない、楽な動作、流れるような指の運び…
これってハードコア・パッドスタイルで私がずっと言い続けてきた「楽に弾く」という考え方と全く同じです。
言語を扱っているということでは、もちろん音楽と同じ。
短い単位で練習するようになっていくところも共通している。
特に疲れないということは、ハードコア・パッドスタイルの哲学と同じくしているんですよね。
チャンク化は大事
薙刀式の練習をしていて実感したのは、まさに「チャンク化」でした。
最初は一文字一文字を意識して…「えーっと、『か』はこのキー」みたいに頭で考えながら打っていたのが、だんだん単語単位で覚えるようになって、最終的にはフレーズの流れで打てるようになっていく。
初めに強く意識する必要があるのも同じ。
これって64パッドでのフレーズ練習やコード進行の習得と全く同じプロセスなんですよね。言語だから当然のことなんですけど。
一音一音を意識していたのが、コードやフレーズ単位で覚えて、最終的には流れるように弾けるようになるわけです。習得コストを減らすように考えている。
実際にフレーズの流れであったりコード進行だったりというチャンク化をしてやってますしね。非常に共通点があるということを実感しました。
こういう仕組みは「手続き記憶」と呼ばれる仕組みなんですけれど、一度身につくと忘れにくいスキルの習得プロセスそのものなんです。
神経回路が自動化されることで、認知リソースが解放されて、より高次な表現に集中できるようになる…
まさに64パッドでも目指していることですよね。
アンラーニングはきつい
今回、薙刀式という新しい配列に挑戦してみて、アンラーニングの大変さを改めて実感しました…
リハビリで経験していたことではある。
私の場合正しい歩き方を覚えなければいけないとか、正しいすべての日常動作を再学習しなければいけなかったんで、まぁそれはむちゃくちゃきつかったですね。
箸の持ち方ひとつとっても痛みが非常に走ったりするので、痛みが出ないということを学習するのがすごく大変でした。
脳の負荷も非常に大きい。異常に疲れるんですよ…
その時に学んだのは、10分15分やって休み、10分15分やって休み、これを繰り返せばできるようになっていくということです。
痛みが出たら、この動きはダメだと。
あまりの痛みに失神したりしてましたね。
もう一回は出来ないだろうなあ…
分散して練習するのは意味があるんです。
短い練習を休息を挟んで繰り返す分散学習の方が、集中学習(一度に長時間行う)より効果的だということがわかってきてるんですよね。
特に新しいスキルを覚える時や、古い癖を直す時には、脳の前頭前野に大きな負荷がかかるので、疲労を管理することが何より重要なんです。
じゃないと間違った動きを学習してしまう。せっかく学習したことがマイナスになりかねない。
疲れたら練習はするな
最近の研究でも、長時間練習の効果について見直しが進んでいるんですけれど、個人的には長時間練習が悪いとは全然思ってないんですね。
トップレベルのプレイヤーはやっぱり凄い時間練習してるわけですしね。
問題なのは「疲労」なんですよ。
疲れた状態で練習を続けると、間違った動作を強化してしまう。
これが一番怖いんです。
私がリハビリで散々経験したことですが、間違った動作を覚え直すのは本当にコストが高いんです。
正しいフォームでやる必要性をしつこいくらい言っているのは私自身がフォームを変えざるをえなかったからです。
第二言語学習の分野には「化石化(fossilization)」という用語があります。これは、間違った文法や表現が、いくら修正しても直らないまま定着してしまう事をいいます。
私は子供のころからドラムを叩いていたので、アンラーニングが本当に困難で出来なかった。
自然に出来たことを作り替えるのに失敗したんです。呼吸する時に意識なんかしないですよね?
そういうレベルからやり直さなきゃいけなかったんですけど、失敗しました。
一回目の事故でドラムを諦めて、二回目の事故でギターの演奏能力もかなりの部分を失ってしまった。
ギターや鍵盤はあとで覚えたものなので、ドラムと違ってアンラーニングは出来た。とは言え、別人になってしまいましたけどね…
正しいフォームを本当に正確に覚えさせる必要がある。
トップレベルのプレイヤーは違う。なんで、あんなに練習出来るのか。
このあたりは興味がある方は調べていただけると良いんですけど、トップレベルのプレイヤーの脳は、長年の訓練で物理的に変質してるんです。
神経回路のミエリン化が進んで、より少ないエネルギーで高いパフォーマンスを発揮できるように最適化されている。だから長時間でも疲れにくいし、集中力も持続する。
でも、初心者は違います。認知的な負荷が高くて、集中力のスタミナも限られている。だからこそ、質の高い短時間練習が重要なんですね。
受験勉強を教えるのも私の生業なので同じことを感じるんですけど、勉強の体力と言うのもあるんですよ。初めは短い時間で切らないと出来ないですね。
初心者の適切な練習時間
私の体感では、初心者の場合、30分以上は無理かなと思うんです。楽器の習得ということでいうとね。
10分でもいいかも…
特に強調したい要素としては、やっぱり時間は短くて良い。
そのかわり 1日のうちに何回でもやることができれば 。
初心者はやっぱり30分以内に抑えることがいいんじゃないかと。
疲れてるなら練習はするな。 これは鉄則です。
数分でもいいから…
もし1日30分しか取れないのであったら、その30分も本当に集中して、何をやっているか。強く意識する。アセチルコリンを出すって事です。タグ化するというのかな。
自動化するためには、まず徹底的に意識することが必要。そうすれば時間が少なくても上達は必ず出来ます。脳は変質しますし、年齢を重ねても進歩は可能です。
「漫然とした100回」より「意識的な1回」が勝るんですよね。
脳は、強く意識されたことを「重要だ」と判断して、優先的に記憶に定着させようとする。だから、短時間でも集中して練習すれば、必ず効果は出るんです。
いいイメージで終わる勇気
もうひとつ大切なのは、「いいイメージで終わる」ということ。
練習中に「あ、今のはすごく上手くできた!」という瞬間が訪れたら、そこで練習を切り上げる勇気を持つことです。
ピーク・エンドの法則というものがあります。聞いたことある方も多いんじゃないでしょうか。
人間はある経験を思い出すとき、その経験のピーク(最も感情が動いた瞬間)とエンド(終わり方)で、全体の印象を判断する。記憶なんかだと中間はあんまり定着しないとか、実感ありませんか?
脳は最後の記憶を強く定着させる性質があるので、成功体験で終わることで正しい神経回路の形成を促すことが出来るわけです。うまくいったと言う経験は練習の継続を容易にするんですね。
逆に、疲労困憊でミスを連発して終わってしまうと、そのミスも含めて記憶されてしまう…
これは本当にもったいないことです。
だから、 だらだらやらない。 「こんな練習量少なくても大丈夫かな…」大丈夫ですよ。
私に出来たことです。
私くらいのぼんくらでも新しい技術は学べるんですから。皆さんなら必ず出来るようになる。
自分のボンクラっぷりを人後に落ちない自信がありますからね。嫌な自信やな……
睡眠の重要性
あと、これはちょっとしたテクニックなんですけれど、記憶の定着には睡眠が深く関わっているので、それを活用すると上達スピードは上がります。
前にもちょっと書きましたね。
私、大学受験生に勉強を教えるのも仕事ではあるので、覚えることについてはうるさい人間なんです…
習得コストを減らすというのは私の生涯のテーマなので。
寝る前にちょっと覚えたいことだけやっておく。覚えたいコードなんかをパッドに表示したりして、それだけを見て寝るとかね。
薙刀式でも、新しく覚えたい文字の組み合わせを頭の中で反復してから寝ると、翌朝には確実に定着してました。イメージトレーニングです。
薙刀式、タイピングを覚えるのはトータルで3時間位でできました。
速いと言えば速いんでしょうけど、おそらく誰にでも出来る。
練習の仕方を知ってるだけです。
どんな時でも上達はできる
時間が少なくても必ず上達できる。これは断言できます。
社会人のハードコア派の皆さんは、自分のために使える時間が30分しかないことは普通にあると思います。
私もそういう時はたくさんありました。
でも大丈夫です。どんな時でも学ぶことはできます。
学ぶことの素晴らしいことは奪われないことだって、B.B Kingが言ってるんですけど、本当にそうですよ。
どんなに苦しい時でも主体性は保てる。
弾けない時でも上達はできる
脳のシナプス結合って、別に体を動かさなくても促されることが分かっているんですよ。前にも話しましたね。
私は結構な事故で長いリハビリ生活したんですけど、その時にその先駆けとなるような実験に被験者として参加していたことがあったんです。
そこで学んだことは凄く私には役に立ちました。
例えばリハビリテーションの分野なんかだと、目で動きを追うだけでも、関連する脳の部位が活動することがわかってます。シナプス結合されるわけです。
手がダメな時は、頭の中でタイピングしていた。
楽器と同じです。この2ヶ月は手がきついから物理的にはパッドの練習は出来てはいない。
でも、手の状態が回復したら上達してますね。こうやって何とか音楽を手放さずに生きてきました。
まとめ
薙刀式の練習を通じて改めて確信したことは、音楽も言語も、そして64パッドの練習も、すべて同じ原理で上達していくということでした。
ずっといってますけど、言語ですし、肉体を使った技術と言うことでは同じです。
力まない動作、チャンク化による段階的習得、疲労の管理、集中した短時間練習…これらはすべて、脳の癖にあわせたやり方と言うことですね。
スーパー・ハードコア派の皆さん、時間が限られていても心配することはありません。
短い時間でも、集中して、楽に動かすことを意識して練習すれば、必ず上達できます。
そして何より、「楽に弾く」ということがハードコア・パッドスタイルの基本的な考え方ですからね…
皆さんの時間を増やせたら嬉しいです。私みたいなぼんくらで、おっさんで、体が悪くても新しい技術は学ぶことは出来ます。
どんな時でも進歩はできる。大丈夫です…


