僕の考える最強のエレピを作る話 Spring Reverb難しすぎ Pad Sensei Keys Web版|うりなみ
ハードコア派のみなさん、こんにちは。
64Pad Explorerで使える物理モデリング音源のPad Sensei KeysをWeb版で使えるようにしました。
近日中にVST/AUプラグインも配布しますのでお待ちください…
64Pad Explorer、スタンドアローン版、それとプラグイン版もAbleton以外のDAWで使えるとうれしいというご意見をいただいたので、プラグイン版も近日中に配布します。
Pad Sensei Keysとは
モテ楽器として名高いFender Rhodes的なアレをリスペクトして作ったものです…
64Pad Explorerの音源部分を切り出したものとなります。
物理モデリングにしたのは、単純にサンプルだと読み込み時間がかかってしまうためです。
物理モデリングにするのはめちゃくちゃ大変でした…
その話はPad Senseiでやります。
リサーチの方法や何を勉強したか分かったら、みなさんも自分が好きな物を作れると思いますので。私のような回り道をしなくて済むはず…
AIパワーで物理モデリングは全部は無理。まあ、やってないことやるわけだからそりゃそうですよね。
でもモテの探究心があれば出来ることはわかりました。
南北問題も解決できるんじゃないかなあ。私の借金問題も解決出来るといいなあ…
さて、64Pad Explorerあるから音源部分だけわざわざ切り出す必要は当初はないと思っていたんですけどね。
HPSをより使いやすいように、音源も読み込んだ状態で使っていただく事を考えるとこれも必要だなと。
DAWで使いたいときに、かっこいい見た目は重要。
簡単に見た目に騙されますからね…
私の妄想をMEGuさんにデザインして頂きました。
ありがとうございます。
いつも大変助かります…
まあ、イメージ画像なので、すぐ実装できるわけではないんですけどね。
だんだん形になっていく過程もコンテンツとして楽しんでいただければなと。
で、おじさんの基本として、知的粉飾は出来るといいですよね?
エレピ小ネタなんかされたらもう、未婚は既婚に、既婚はバツ1にとモテることは火を見るよりも明らかです…
どうです、向学心が起こってきたでしょう。フフフ…
ということで、我々が大好きなエレピについてちょっと書いておきます。
なんでRhodesをモデリング対象にしたのか
Rhodesをモデリングの対象にしたのは、自分が実機を持っていたこともあるんですけど、論文があったことが大きい。
いくらDIYがファンク精神の基本とはいえ、全く何もないところから作るのは厳しすぎる。
私が持っていたのはStageの73年で、レジェンドの定番どおりTwin Reverbに突っ込んで弾いていました。
先行研究があるのはデカいですからね…
まあ、でも知りたい肝心なところに論文はなかったりね。
構造体が近いものなど色々調べました。
音響心理関係は不勉強だったので、面白かったですね。このあたりも紹介出来たらいいですね。
AI的には正しくても、倍音構成が違うから人間にはピッチが正しく聞こえないとかね。なんで、こんな竹っぽいんだとかね。AASなんかかつて通っただろう道も理解できた。
物理だけで突破は出来ない。そりゃ、当たり前なんですけど、作って初めて分かったことはたくさんありました。
ぜんぜん違う分野から、ベル的な響きにする手がかりを得たり。調べるのは面白いですねえ。
楽器としての特性は知っていても、楽器の構造を深く知っているとは言えなかった。作ってみることで理解は進んだ。
とは言え、最後は友達からのデータもらって、「あれ、これはどの物理を間違えてるんだろう?」というの繰り返しで近づけた感じです。
一番デカかったのが、AIが指示したとおりに実装してなかったので、最後はひとつひとつ確認して、修正。
高校物理レベルでもありえんような間違いとかね。
AIの適当さに驚きましたね…
「なるほど、深い」
「完全に理解しました」
「筋が良いです」
「これは強い」
「腹落ちしました」
などと言いながら、物理法則を無視した実装などをたくさんしていました。面従腹背って言うんですかね…
AIにファンキーであれと教育していたとことが失敗したんですかね…
ファンキーすぎでした。
もちろん、完璧な物理モデリングなんか作れるわけがないので、私が思う、Fender Rhodes的なものを妄想込みでモデリングしたという感じですね。
作って良く分かったのは、物理モデリングとして何が重要なのか切り取るのはセンスと言うか、世界の捉え方に近いんだなと。
やってみるもんですねえ。
実機、個体差が凄いのと古いやつはまず手を入れないと使い物にならないんです。
鍵盤が波打ってたり、ハンマー部分が硬化したりしてますし。
そのあたりは友達の話や各パーツメーカーのものをリサーチしたりね。
最後の決め手は、普通のサービスマニュアルじゃなくて、その人の覚書があるやつを友だちが送ってくれた。
世界中の、ソウル・ファンクマニアのネットワークに感謝です。
お礼にブルース&ソウル・レコーズのオルガン特集をみんなに送りました…
さてさて、ではちょっとエレピについて見てみましょうか。
HPSはパッドを通じて音楽を包括的に理解するのが目的でしたね。
え、初めて聞いた?
ふ、なぜなら今思いついたからね…
単なる情報に意味がない時代に、差別化はフットワークの軽さにしかない。
言動の軽さとフットワークの軽さには自信があります…
エレピの違いなんか説明できたら、モテる。モテまくる。少子化問題も解決しちゃうんじゃないかな…
エレピには3種類ある
エレピは構造で分けると実は3種類に分かれます。
エレピって一括りに言われるんですけどぜんぜん違うわけです。
振動体やPUが違います。こんなの一括りにエレピって言ったらあかんやろというくらい違います。
- Rhodes PUとティン
- CP80 ピエゾPUと弦
- Wurlitzer 静電PUとリード(弦の代わりに金属の板を使った、超乱暴なコンデンサーマイクみたいな感じです…)
Rhodesの歴史なんかはやり始めるとハードコア・ローズ講座全12回位になってしまうので、涙をのんでやめにします…
普通のピアノと最も近いのがCPですね。CPは70と80があります。
ディアンジェロが使っていたので有名だと思います。ディアンジェロはCP70かな。これは特徴がわかりやすいですかね。
Wurlitzerはソウル・ファンクが好きな人だと、Donny Hathawayの利用が有名ですかねえ。
構造をあらためてみると200Aだと150V〜170Vと電圧をかけてる恐ろしい仕様です。
すぐ歪む。
バンドのオルガンが一時期持ってたんですけど、めちゃくちゃ乱暴な楽器です…
ローズに比べると繊細ではないんですけど、これも、また魅力的なんですよね。
まあ、とはいえ、DonnyはレコーディングではRhodesも使っていますし、This Chirsimasなんかは、Rhodes Piano Bassという珍しいエレピを使ったりしてますね。
ああ、フィル・アップチャーチのソロアルバムでも弾いてたかな。
最初のWurlitzerを使ったヒットはRay Charlesのこれですね。
録音という意味だとSun Raのほうが早いという話もあります。
CPはまだ買える値段ですけど、RhodesとWurlitzerはもう古いものだと買えない。
すごい値段になってしまいましたしね…
ボロ儲けしたら買いたいなあ。
ワンチャン、新事業の設備投資としていける?
ちょっとやる気がでてきましたよ…
そして、SuitcaseとStageというモデルが、Rhodesにはあります。
それはアンプの有無だったり、トレモロがどこに入るかだったり実装する上で違いがあります。
ですけれども、そんなのマニアな人しか興味はないだろうなと。
初めは別々にモデリングしていたんですけれど、いい感じの音がさっと弾けるという目的からは反しますからね。そういう意味でもRhodesの完全なモデリングではないです。
操作のことを考えてシンプルにプリセットを選ぶという形にしました。
内部的には大量のパラメーターがあるんですけど、シンプルにしました。本当はね。ドン引きするくらいあるんですよ…
Rhodesでいわば73個の楽器が入ってるような化物楽器なんで。
その個体に忠実というのなら、サンプルという判断も納得できます。
KeyscapeのVintage Vibeの個体、サンプリングに1年くらい掛けたみたいですからね。
Vintage Vibeのインタビュー見て、まあ、それくらい異常な作り込みしないとあんなのにはならないんだなと思いました。サンプリングもとんでもないノウハウがあるんでしょうね。
パラメータと内部的な仕組み
Model
音色の選択です。
Ultra Clean(Stage系、アンプを通さない、クリーンで透明な音)
Suitcase Clean / Drive / Vintage(HPS会員のみ、Suitcaseアンプを通した音、性格違い)
本当はDIのモデリングもしたんですけど、それは今回使わないことにしました。
VOL
マスター音量です。
E.PIANO MIXER
PU LEVEL
ピックアップから出る電気信号のレベルです。0にするとPUの信号が完全にミュートされます。
鍵盤を叩いたときのカチャっという機械音を担当するMECHANICALとは別経路になっているのでお好みで調整してください。
COLOR
ピックアップ(PU)とティン(弦の代わりに使われている金属の棒)の位置関係を変えるknobです。実機Rhodesはこの位置関係で音色が大きく変わります。中央が一番ベル感が出ますかね。
少しずらすと倍音の出方が変わり、明るさや厚みのバランスが動きます。
竹感、ベル感みたいなものの調整が出来ます…
MECHANICAL
機械音のレベル。鍵盤を叩いた瞬間のアタックノイズや、離したときのリリース音をまとめて操作します。実機にこのつまみはありません。
でも実際にRhodesを弾いていると鍵盤やハンマーの動く音が必ず聞こえていて、それが楽器を弾いている実感の一部になってますよね?
そこを調整できたら嬉しいなと思って入れました。まあ、僕のかんがえる最強のエレピだから…
AASやSpectrasonicsはパラメータで入ってた。実機に近づけたいとなるとあると嬉しいんですよね。音源にしたらほぼ聞こえないくらいになるでしょうけど。
0にするとティンの音だけになります。
BASS / TREBLE
これは悩んだんですが、普通のEQにしていません…
実機SuitcaseのBaxandallトーンスタックをモデリングしています。
普通のEQじゃなくて実機の回路を再現する、という遠回りをしています。
普通にEQ付けたほうが100倍楽だったんですけどね…
これもオールド・スクールらしさに寄与すると思ったので。
本当、ちょっとした差なんですけどね。でも、その小さなことが大きな差になるんですよねえ…
TREMOLO
実機Rhodes Suitcaseに内蔵されていたエフェクトを物理モデリングしています。
実機のパネルにはVIBRATOと書かれていますが、実際の挙動は左右のチャンネルで逆相に音量が変化する仕組みで、ピッチは動きません。
電球とLDR(光センサー)を使ったアナログ回路で作られていました。名前はビブラートだけど、挙動としてはパンに近い。
なぜVIBRATOと呼ばれているのか、なぜそれでもRhodesらしい揺らぎとして成立しているのか、このあたりはPad Senseiでまた取り上げます。
なかなかおもしろいですよ。
ちなみに歴史的には、1969年より前のSuitcaseはモノラルのVibratoでした。
Suitcaseアンプがステレオ化された69年以降、左右に振るパン効果になり、これが現在我々がエレピらしいと感じているあの揺れです。
それ以降、みんなこのステレオVibratoの音で聴いている。
Pad Sensei Keysを最初からステレオで作ったのは、そこに合わせたかったからです。
原理は簡単なのに、らしいモデリングにしようとすると沼でした…
フォトセルと光源なんかに踏み込まないとらしい感じにならないという。
論文がほとんど見当たらなかったので、自分で調べるしかなかった。
トレモロマエストロとかトレモロソムリエとか国家資格にしてくれないかなあ。AI時代のリスキリングとしてどうでしょう…
しかも分かったからすぐ実装できるわけでもない。頭を何度も抱えました…
choppyとかbutteryとか「とろける」とか、各国の演奏者が残してきた定性的な評価を多言語でマッピングして、それぞれの言葉がどの物理現象に対応しているのかを突き合わせて、物理にのっとる形で実装するという蛮族プレイで突破。
死ぬかと思ったぜ。蛮族、平均寿命短いですしね…
天才的な発想だと思ったんですけど、AIにスルーされました。
奴ら、ファンクが過ぎるぜ…
方法論として間違ってるとかどうでもええんや…
逆問題の制約条件として考えればいいだろうにとAIと大人気なく大激論してしまいました。
頭が固すぎる。まあ、自分がそんな事されたらAIと同じ反応しますけどね。フフフ…
TREM 深さ。0で効果なし、上げると左右の揺れが大きくなります。
T.SPD 速さ。
REVERB
TYPE
スプリングリバーブまたはプレートリバーブから選びます。
冒頭で書いたとおり、私はStageをTwinに突っ込んで弾いていたので、スプリングのほうはTwin的な音を目指しました。
実は物理モデリング本体より時間がかかってます…
もう、正直みんなSoftubeのSpring Reverbを買えと言いたい。
あれね。とんでもないんですよ。
作って、本当にあれがどれだけ異常なものか良く分かった。
Shakeパラメーターとか、 物理モデリングと回路モデリング 両方できてるということですからね…
Shakeって、遊びパラメータだと思っていました。
あれ、たぶんリバーブを作ってる同業者に対する示威行為ですよ。「お前ら、出来る?俺等は出来るけど」って。
あんなの遊びで入れられるわけがない。
後で書きますけど、IRではスプリングリバーブの挙動は再現できないんです。
バネのモデリングのゲインの循環系、しかも回路のモデリングと一体どうやってるのか。
まあ、わからないんですけど、Softubeのメンバーの修論で何を作ってたとか論文追いかけて、レイテンシーが異常に少ないのもどういう事をやっているかあたりはつけられた。
ブラウザでやる以上出来ないんですけどね。
回路を正しく作れば、正しい音になるというのが、開発思想なんだと思いますけど、何より強く感じたのは、機材に対する愛ですね。
これは作ったから分かったことである。
奴らは、マジで天才集団ですよ。
Softubeのプラグイン、値段が下がらないですけど、そりゃあのレベルの人間抱えてたら無理というか、なんで経営成り立つのかがわからない。
音響系で有名なのは、西のIRCAM,東のCCRMAみたいな感じだと思うんですけど、Softubeは違う。
バックボーンが制御工学系で全然思想が違う。インタビューしたいなあ。
開発者リストとか論文追いかけられる所は追いかけてるんですけど、まだまわからないことが多すぎる…
あんな、大学のラボレベルのことやっていてどうして会社として成立してるのか。
モデリングしてるところはほとんど大学での研究を元にしてるというのも分かった。
BtoBでなんとかしてるのかな…
どう考えても赤字になると思うんですけどね。
開発者がプラグインによって、違うんですよ。
Pad SenseiのSpring Reverbは自分の好みには出来たと思うけど、もう、次元が違う。
SoftubeリスペクトでShakeもつけてメッセージは受け取ったぜ!という遊びをしたかったんですけどね。とてもそこまでは無理でした。
同じリバーブでも調べていくとスプリングとプレートでは事情が違うんですね。
プレートは線形に近いのでIR(インパルスレスポンス)で十分。それなりに満足するものがある。あ、でもそのうち挑戦はしたいですねえ。
でも、スプリングリバーブは非線形が本質なのでそうはいかない。
これ、実装してみるまで本当に分からなかった。
世の中のリバーブのプラグインってリアルさを謳うものはだいたいIR方式で、スプリングリバーブのIRも普通に売られてるじゃないですか。
だからIRでスプリングリバーブは作れるって普通に思いません?
私もそう思ってた。
でも実際に物理モデリングで作って、IRと聴き比べると、ぜんぜん違う。
なんでかというと、IRは線形の記録しかできないから。一発のインパルスに対する応答を録ってるだけ。アタックやボリューム変化に弱い。
信号レベルで挙動が変わるとか、タンクを揺すったときの非線形な暴れ方とか、強く弾いたときの歪み方とか、そういうスプリングらしさの核になる部分は、IRには絶対に入らない。原理的に入らないんです。
SoftubeのSpring Reverbの異常性が伝わりますかねえ。
技術力を誇示してる。
いやあ、もうどんだけでも自慢してくださいと思いますね。凄すぎて。ずっと愛用してきているのもなるほどなと思いました。
IR方式のスプリングリバーブは全部、ある意味偽物なんです。
でも、偽物に過ぎない音源で限りなくオールド・スクールな偽物を作る。その気持は本物…
こ、これは、ロマン砲や!おじさん、ロマンに弱いお年頃ですからね…
IRだと簡単に動くし、それっぽい音は出るけど、実機の手応えは絶対に出ない。これ、実装するまで本当に分からなかった。
理屈でIRは線形って知ってても、実装してみてああ、やっぱり違うんだと。
初めは、ReverbはWebaudio標準のものにしていたんですけど、これ、やっぱりやらないと、オールド・スクールと言ってるのに嘘だなと。
ですので、一旦難しすぎて諦めていたものを再開しました。
スプリングは、エネルギーが循環する系で、しかも実物のバネは3次元的にねじれたり縮んだりしながら振動するので、現象がめちゃくちゃ複雑なんですよ。
あんなに見た目簡単なのに。
男女関係みたいなもんですかね…
これを正面から物理シミュレーションするのはブラウザでは無理。
計算量の縛りがある。
いろんな近似を組み合わせて作っていくしかない。
まあ、蛮族エンジンの発想を応用しました。
蛮族エンジンに関しては、またどこかで。
DSPエンジニアの人が聞いたら野蛮すぎて失神するんじゃないかな…
リバーブはマジで、複雑です。
例えば低域は3秒残るのに高域は0.5秒で消えるという周波数依存の減衰を、ループの中で毎周回かけながら、テールが死なないように調整する。
マジでね、頭おかしくなりそうになりました。
でもね、賢い人は考えてるんですよ。
でも、それをそのままやってもうまくいかなった。
一個触ると他が崩れる、というのを延々やり続ける感じでした。
最初はAIに全部任せようとしてたんですけどね、無理でした。
それっぽいことはやるんですよ。
動くし、音は出る。でもよく見ると、頼んでもいないフィルターを勝手に入れてたり、エネルギーのゲイン制御が物理から外れてたりして、音が分離して歪んだりする。
Abel、Välimäkiの論文、Korenの真空管モデル、Accutronicsタンクの実機の仕様、AB763 Twin Reverbの回路。結局そういうのを読んでいって地道に、こうでは?と繰り返す作業だった。
普通に使っていたSpring ReverbをPCで動かすことがいかに人類の叡智か分かった。
自分でアンプを作ったことはあって、Accutronicsなんかはお世話になったことあるんですけど、現実では単純なんですけどねえ…
Softubeがどうやってるのか知りたすぎる。
正直に言うと、Rhodesの本体(ティン、PU、アンプ)よりも、このリバーブのほうが時間がかかってます。アホ過ぎる…
理想のスプリングリバーブがつくれないかなあとChatGPTが出た頃から試してたから2年くらいかなあ。
リバーブが楽器の付属物だと思ってる方には信じられないかもしれないけど、Rhodesの音はTwinとスプリングとトレモロまで含めて完成する。
ブルース・ギターなんかもそういう感じですよね。空間ではなくて、音色なんですよね。
ここを手抜きしたら全部が嘘になる。
僕の考えるさいきょうのローズにならない…
Vintage Vibeみたいな感じですかね。
Vintage Vibeは自分のローズのときにも部品取り寄せたり、色々したんですけどね。
モデリング、完成するまでにびっくりするくらいコストが掛かってしまいました。
いやあ、本当にプラグインにして売れなかったらどうしよう…
TONE BALANCE(PER OCTAVE)
Rhodesは音域によって音量に癖がある楽器です。
低音は太く出るのに中音域がやや引っ込んだり、高音が伸びなかったり。実機でも個体ごとにこの癖が違います。
Pad Sensei Keysでは、Voicingで全体の方向性をDyno風かFactory風かで選び、E0-E6のスライダーでオクターブごとに細かく音量を調整できるようになっています。
本当は73鍵すべてに個別の音量バランスをつけたほうが実機に近いんですが、それをやるとプラグインの調整が実機のメンテナンスみたいになってしまう。
ある意味究極のリアル志向としてありなのかと思ったんですけど、やめました。
鍵盤を一個ずつ追い込む作業は、もう音楽を作るための道具ではない。泣く泣く、オクターブ単位の7段階に落とし込みました。
これもまあ、ロマンと言えばロマンかな。
希望があれば73鍵全部UIに出しますよ。フフフ…
Preset
よく使う組み合わせをまとめたものです。
開いていただければどういうものかわかると思います。
Urinami v1 / v2は私が詰めた値です。僕の好きなローズという妄想プリセットです…
Voicing
ピックアップとティンの位置関係のパラメータです。
ベル感から竹感みたいな調整が出来ます。
Dyno: 70年代から80年代にかけて、Dyno-My-Pianoというカスタムショップが多くのプロミュージシャンのRhodesを調整していました。ベルの音が立って、抜けのよい派手めの音。それを参考にしました。
Herbie先生とかBob Jamesとか、Joe Sampleとかあの辺りの人も顧客だったはずです。
一回だけコンディションがいいものを弾いたことがあるんですけど、個人的にはベストでしたね。死ぬまでにもう一回弾きたいなあ。
Factory: 出荷時相当の調整。Dynoより落ち着いた、素のRhodesらしい音。ロー・ファイにしたいときとか、そういう質感にも寄与するかも。
F-NEW
実機Rhodesの低音がブーミーに鳴るのは、低音域のティンが長いほどピックアップに対して大きく出力するという電磁気の性質があるからです。
Faradayさんの法則ですね。
最初の実装ではAIがこの計算を端折っていて、低音がぜんぜん効いていなかった。
やつら、「なるほど、深い」と言いながら高校レベルの物理を飛ばしていたわけです。適当過ぎる…
F-NEWはここを物理通りに直したknobで、Onにすると低音域だけがブーストされます。On / Offで比較できます。
Bass Drive
Rhodesは個体差が大きい楽器で、低音の量も実機ごとに違います。工業製品としてどうなのと思わなくも無いんですけど、それがいいんですよねえ…
友達のものと自分が昔サンプルしたものを比べたら全然違っていたし、73年と75年というモデル差もあれば、経年劣化でティンの動きが変わっている影響もある。
もちろん、サンプルの条件が違うにしても、あまりに個体差が大きい。
これをティンに対するPUの位置や距離といった物理パラメータで一個ずつ追い込んでいくのは、あまりにも大変。
そこで発想を変えて、強く弾いたときに歪みが深くなるピックアップの非線形特性を、低音域だけ強めに効かせるknobにしました。
ピックアップの巻いてる数もギターよりずっと少ないんですよ。Rhodesは。
もう、本当にモデリングなんかやめればよかったと何度も思いました。
そして出音はエネルギーに応じて振る舞いが変わるなら、物理に従っているのと同じことということで。別に論文書くわけじゃないわけですから。
物理モデリングにこだわってるわけではなく、オールド・スクールな音で楽しく弾けることにこだわっている。
あと、低音がブリブリしてるほうがモテそうだからですかね…
F-NEWが物理通りの低音増強なのに対して、Bass Driveは個体差や経年で変わる低音を、非線形な歪みで作れたらという妄想で作りました…
E0-E6
7オクターブ分の音量補正。Presetを選ぶと値が変わります。自分の好みに合わせて動かすこともできます。
VOICING LAB
これは私が新しいpresetを作るときの作業ツールです。物理モデリングの内部voicingパラメータをリアルタイムでA/B調整できるようになっていて、Suitcase preset時のみ有効です。
knobは5つあって、信号経路順にPRE-TRIM、DRIVE、MAKEUP、J-A MIX、TOTAL GAIN。
PRE-TRIMはpreampに入る前の入力レベル合わせ、DRIVEはpreampへの押し込み量で歪みの深さを決めます。
MAKEUPはpreamp後のレベル復元、J-A MIXは経年トランスの磁気飽和の効き具合、TOTAL GAINは全体ゲインの派生表示。
入口で押し込んで(DRIVE)、出口でレベルを揃える(MAKEUP)というセットになっていて、その前にPRE-TRIMで動作点を合わせる、というのが基本的な使い方です。
J-A MIXはVintage presetだけ少し効かせていて、経年劣化したトランスの感じを出してます。
いらんやろと思ったでしょ?
いや、これはオールド・スクールなものを目指してるんだから必須なんです…
究極の自己満足パラメータと言えます。
まあ、こんなパラメータつけるプラグインはないでしょうね…
ここまで来た方は、自分で触って遊んでください。
preset切り替えながら比較すると、Clean / Drive / Vintageの違いがどこから来てるかが見えると思います。
まとめ
というわけで、Pad Sensei Keysでした。
冒頭でも書いたとおり、これは完成品ではなくて進行中のプロジェクトです。なにせ、まだUIも質素なものしか出来てない。
Suitcaseアンプはまだ満足のいくレベルじゃない、エンベロープフィルターもPad Sensei Keysには搭載してない。
あれもオリジナルなんですけど、普通なんですよね…
普通に高品質。平均回帰はファンクから遠い。もっと頭が悪い感じに掛かって欲しい。
これから順次アップデートしていきます。
VST/AUプラグイン版も近日中に配布します。
Web版はブラウザを開けば誰でも触れて無料。これは頑張りたい。
プラグインは有料にしますけど、ソースコードはMITライセンスで公開しているので、自分でビルドして、是非、ご自身の俺の考える最強のエレピを作ってください。
それから、Rhodesの音はTwinとスプリングまで含めて完成すると書いたとおり、私は楽器とエフェクトを切り離して考えてないんですね。
これからもアンプやエフェクトの開発は続けていきます。
Twin Reverbの実装も将来やりたいし、その先にはWurlitzerもClavinetもありますからね。
夢も借金も膨らむなあ…
いやあ、HPSのメンバーが増えるか、プラグインでなんとかならないとパッド先生も廃業せざるをえないですからね。
パッドに全振りのこの人生、けもの道をひた走ります…
ハードコア派のみなさんへ
こちらが、HPS専用のアドレスになります。楽しんでいただけたら嬉しいです。
次はシーケンサー。MRCはコード譜専用アプリとして公開します。ちょっと機能が多すぎたので。





