2025/04/29 MEGuさんレッスン ハイブリッド・コードとモード|うりなみ
今回のレッスンではハイブリッド・コードについてやりました。
それとモードですね。
ハイブリッド・コードの特徴は、3度音(調性を決める音)が含まれないことで、メジャーかマイナーかが曖昧になります。
調性音楽の世界から飛び出したいときに使われるコードとも言えます。
キーがCのときにFのトライアドにGのベース(F on G)といった使い方が代表的ですかね。聞いたら、「ああ、あれね…」となる方も多いんではないでしょうか。
メジャーとマイナーを決める3度を持たないことにより調性がぼかされ、調性音楽の枠組みを超えた表現が可能になります。まあ、単純に「クール」「爽やか」「広がり」を感じるコードでもありますね。
特にポップスでは、ドミナント部分をハイブリッドコードに置き換えると、急速に解決する感じではなく、「広がった感じ」感じがするんではないでしょうか。
トライトーンがないので、ドミナントモーションはないけれど、サブドミナントっぽくもあるので、弱い解決感や広がりもある。
Marvin GayeのWhat’s goin'onの印象が強いですね。頭に戻るときに使われてます。響きは一回覚えたら印象的なので忘れないんではないかしら。
What's goin' onは音楽的にはジャズぽいと言われるのはモーダルなアプローチが多いからでしょうね。
もちろん、さまざまなジャンルでハイブリッドコードは使われるんですけれどモードをやるときにはマイナー9かこのハイブリッドコードが使われてることがあまりにも多いんです。一回認知したら、すぐ気づくようになりますよ。

ハイブリッド・コードの初出は特定できないですが、ソウルではかなり早く使われているコードです。
1960年代のソウルミュージック、特にカーティス・メイフィールドは多用しているイメージがあります。
ライブだと明確にハイブリッド・コードで弾いてたりするんですけど、スタジオ盤だとちょっとわかりにくいものしかなくて残念です。
People Get Readyなんかはハイブリッドコードで弾いてるんですけどね。
解決しないことは、無限に広がる可能性でもある。ハイブリッドコードって、「希望」や「広がり」を感じさせるようなコードでもある。クールでもあるんですけどね。
公民権運動の時代背景と結びつけるのは牽強付会にすぎると言われそうなんですけれど、私は強くそういうイメージがありますね。
さらに、1970年代になると、ロイ・エアーズやチャールズ・ステップニー(EW&Fの仕事で有名ですかね…)、あとはあんまり言われてないと思うんですけど、クインシーなどが今までに使われてなかったやり方を開発していきます。
正確に言えば、ジャズのバックグラウンドがある人たちがクールな使い方をソウルやファンクに導入したということなのかもしれませんけど。
クインシーはプロデューサーとしての仕事が取り上げられがちですが、Quincyがブラック・ミュージック、特にソウルやファンクで洗練されたハーモニーを導入したことは大きい。
もちろん、グレイトなプロデューサーですけれど。
評論家は音楽面について語らない(語れない)ので、手落ちだなと思うことはありますね。いずれやりたいですね。
ブルージーにする時、ジャズやブルース、ゴスペルなどでは全てのコードをドミナント7化するという調性音楽では全く考えられないようなことやったわけです。
ソウル・ファンク、ジャズでは、ハイブリッド・コード、超かっこいいからどこで使っても良いんじゃないかということになっていくんですよ。ええっ…
ブラック・ミュージック全体に言えることだと思うんですけど、物凄く抽象的なところがあるんですね。
これが使えるということはこれも使えるだろうと共通点を見出して適用する。結果として複雑なサウンドになってることは多いんですけど、考える方法は物凄くシンプルだったりするんですよ。
おいおい、待ってくれと思うかもしれませんが、これがブラック・ミュージックの進化なんです…
そして、古いとなった瞬間に振り向きもしなくなる。
このあたりは、いまでは古典の『リズム&ブルースの死』などをご覧になるとよく分かると思います。
80年代のブラコンと言われるようなソウル・ファンクはハーモニー的にはぶっ飛んでるものもあるんですけど、その嚆矢となるとルーサー・ヴァンドロスのこれですかね。
イントロからぶちかましていますね…
これ、ハイブリッド・コードを平行移動しているだけなんですよ。乱暴だけど超かっこいい。クラシックの人が泡吹いて倒れそうですね…
このときのマーカス・ミラー、まだ10代なんですよね。マーカス・ミラーはもちろんフュージョンのスーパースターですけど、私はR&Bの仕事のほうが印象に残ってます。
知らない人にとってはハイブリッドコードを動かしてるだけなんですけど難しいことしてるように聞こえるんじゃないかな。
70年代ファンクからは特にモードに基づいて作られる曲が増えます。
全部がモードというわけではないのがちょっと分析する側には難しいところがあるんですが、まあ、弾けたらわかります。今後やっていきますからね。
モードに興味がある方は、今回のメグさんのレッスンをご覧になると、ジャズ的なモードと随分、ソウル・ファンク系のモードのボイシングは違うことがわかると思います。
特にDドリアン(Cメジャースケールと同じ音で構成される)のモードのボイシングとして、3コードを(第二転回形)で動かすと一気にらしくなります。
こういうの、全然教則本や動画ではやらないんですよ。言ったらすぐ出来るからなんでしょうねえ…
動画ではマーヴィン・ゲイの変形ブルースであるTrouble Manのコード進行を取り上げて説明してます。
これ覚えるだけでも、ドリアン一発ものなんかは様になって楽しいんじゃないでしょうか。我ながらドリアンでMarvinを取り上げるのはあまりにもハードコアな気がしますけどね…
でも、So Whatのようなジャズより皆さん喜んで頂けるかと。モードの曲、たくさんあるのに、取り上げられるのはSo Whatばっかりというのも変な話ですしね。
モードは調性感を感じさせない「クール」な響きを持ち、ドミナントセブンスの「熱苦しい」響きとは対照的なんですけど、どちらもブラック・ミュージックの特徴でもあります。
こういう相反した要素があるのは美しい。
いつまで経っても興味が尽きることはないですね。
マーヴィンはファンク度数が偏差値100超えのレジェンドです。どれくらいファンキーかはこちらをご覧いただければわかるのではないかと…

メグさんのレッスンではしばらくモード中心のあんまり日本でやってないことやると思います。ジャズではないですけれど。
Lick Of The Dayと同期させていくかもしれません。
Chicの分析なんかはかなりやる予定です。ベースラインやギター特集になってるかもしれないですけど…
そう言えば、Nileはギターも凄いんですけど、作曲能力も異常ですね。
コピーすると、「ええっ…」てなることが多いです。ドリアン・モードでの作曲が多いのは現代のハウスやテクノまで影響与えてるんではとすら思いますね。
ナイルと言えば、アイドルの一人ではあるんですけれど、レジェンドはその場を盛り上げるために適当なこと言うんだなということを思い出しました…
「コンプは自分の手で掛けるものさ。言わば、僕の右手がコンプレッサーと言える…」と10代の頃に読んだインタビューを真に受けて、やっぱりナイルは巧すぎる(上手いのは間違いないんですけど)、コンプは邪道とハードコアな練習をしてました。
「どう考えても、コンプの音やん」と思いつつ、それっぽく弾く技を10年くらい練習して身につけて、「僕の右手がコンプなのさ…」とイキり倒していたんですけど、ある時インタビューをみたらこんなこと言ってやがったよ…
「僕のサウンドに欠かせないのはコンプレッサーさ!コンプを掛けるのはスタジオワークでは当然だね」と言っていて「だ、騙したな…」となりました。どうでもいいですね…
でも、ハーモニーはマッコイ・タイナーの影響を受けたというのは嘘かと思ってたけど、本当だと最近は思ってます。
4度堆積コードは、純粋なファンクギタリストからは出ない発想ですしね。モーダルなものでも、Chicはジャズっぽいです。鍵盤やシンセのボイシングは特にそうです。
ただ、「リズムで影響を受けたのはシーケンサーさ!」とか、絶対思いつきで喋ってるでしょというところもかっこいいですね。
ただ、ナイルの名誉のために言うと、Chicってめちゃくちゃ独自のバンドなんですよ。本当にどのバンドとも似てないです。
ギタリストとしても異彩を放ってます。
ナイルはめちゃくちゃピッキングスピードが遅いのと、超弱く弾くんですよ。ブラックの人たちはだいたい弱く弾く傾向にあると思うんですけど、あそこまで弱く、遅くというのは無い気がしますね。リズムも異常。
Chicは超異常なバンドでグリッドを全員わかっているうえでジャストに弾かない人たちなんで、師匠たちは当時戸惑ったらしいですね。異常集団です。
あのゆるさは逆にグリッドがめちゃくちゃ見えてないと無理だから、頭を抱えただろうなあ。
ブラック・ミュージックのリズム・セクションとしては超異彩を放ってるんでそういうアンサンブルに注目するのも面白いと思います。
